法定通貨と強制通用力

 

○法定通貨

 

法定通貨は、法律を利用することで通貨の「信用」を高めようと、近代の各国政府が定める施策です。

 

法定通貨を定めることで、その通貨を「決済手段として使う権利」が定められます。

 

自然状態では、各人が物々交換を含む、多様な決済手段で取引を行いますが、

 

法律で法定通貨を定めることで、それを共通の決済手段として使わざるを得なくなり、結果として信用が向上することを期待した制度です。

 

世界各国ではそれぞれの法定通貨が定められており、先進国では概ね自国発行の法定通貨を1つ持っています。

 

バチカンやモナコといった、自国だけで完結できない国では、通貨を隣国や保護国や旧宗主国の通貨を用いたり、ドルを使用しているケースが多く、

 

ジンバブエのように自国の通貨システムが破綻した国では、複数の国際通貨(ハードカレンシー)を取り入れている国もあります。

 

 

 

○強制通用力の法的効力

 

法定通貨が持つ、「決済手段として使う権利」は、「強制通用力」と呼ばれています。

 

強制通用力を法律で設定することにより、具体的にどのようなことが起こるかといえば、

 

取引(売買)の際に法定通貨以外での支払い要求を拒否することができます。

 

 

例えば、商店で野菜を買うときに、店長から「うちは日本円は受け取らない。金か銀で支払って欲しい」と要求されても、日本円で支払うことができるということです。

 

 

裏を返せば、強制通用力の無いものでは、決済(支払い)を拒否できるということです。

 

例えば、クレジットカードや、ポイントカードや手形などには強制通用力がないため、受取側が拒否しているなら支払うことはできません。

 

 

硬貨(小銭)については、強制通用力に枚数の制限があります。

 

「通貨の単位及び貨幣の発行等に関する法律第7条」という法令で具体的に定められており、

 

同一硬貨は20枚までしか強制通用力がありません。

 

 

したがって、一回の取引で小銭で強制的に支払える最大値は、

 

(500円+100円+50円+10円+5円+1円)×20枚 = 666円×20枚 = 13,320円 までということになります。

 

 

現状、無制限かつ強制力を持って利用できる通貨は、「紙幣」及びその「預金データ」の2つということになります。

 

 

また、「通貨」という言葉も、「(強制)通用貨幣」からきています。

 

つまり、各種の貨幣のうち、通用しているものが「通貨」と呼ばれます。

法定通貨と強制通用力は、「交換力=流動性」を高める

 

法定通貨と強制通用力で守られた「通貨」は、交換力を保証されます。

 

「交換力」は経済学用語や会計用語等で「流動性」とも呼ばれます。

 

お金の性質として、「交換力=流動性」が高いところに集まる性質があります。

 

万一のときにすぐに他の資産に両替しやすいからです。

 

 

例えば、土地や債券は流動性が低いので、売買に時間がかかり、

 

バブルが崩壊したりすると、売って逃げられなくなります。

 

現金や預金であれば、仮にインフレが起きても、貴金属や土地を買うことで逃げることができます。

 

「流動性」は、特に資産運用しているお金の所有者にとっては重要なことです。

 

 

結果として、法律の信用があればあるほど、「現金・預金」の形で持つ人が増えることになります。

法律・制度がどのくらい機能しているか

 

さらに踏み込むと、「法定通貨」と「強制通用力」は、法律で定められているので、

 

「法律」が守られている度合いが重要になります。

 

例えば、戦中・戦後のゴタゴタの中では、法律はあまり守られないことから、これらは十分に機能しません。

 

 

したがって、最終的には、「法律を守らせる政府の力」や、「法律に対する国民の姿勢」といったものが、

 

その国の通貨の性質を左右することになります。

 

 

政府発行債務の残高が異常に多いにもかかわらず、

 

日本円の信用(信用といっても色々と種類がありますが)が世界で高いのは、

 

「法律を守らせる政府の力」や、「法律に対する国民の姿勢」の2つが非常に強いからであるといえます。

 

 

日本社会が非常に閉じた性質であり、ドルなどの海外通貨が定着しないことも、

 

(今後何があっても日本人は日本政府や円と心中するだろう、という意味で)

 

日本円の「信用」評価にプラスの要因となっています。